太極拳の神気精

古式楊式太極拳では、神気精の一致を最も大切にしています。
「神」=しん、という森羅万象と繋がった純粋心を主体にして生きることは、後天の性の中心にある「自我」が原因の「心理的ストレスへの曝露」から遠ざかることになり、純粋心を主体に生き、その心がエネルギーを動かしその「気」により、種々な精神疾患に至ることのない脳機能と生理である「精」を維持することにもなります。これが、太極拳の「養生」の根幹にある「内丹」です。これが一致しているときは、最高の心身の感覚があります。
太極拳による内丹により、長寿を得ること、そして、「節節貫穿」という理論により、細胞の健康を維持するという経験科学が古くからありました。

心理的ストレスへの曝露や、種々の精神疾患の罹患により、テロメア長(TL)が異常に短縮することが知られている。また最近、複数の精神疾患におけるミトコンドリアDNAコピー数(mtDNAcn)の変化も報告されている。しかしTLやmtDNAcnの異常と、精神疾患の最も深刻な転帰の一つである自殺既遂との関連を調べた研究は未だ存在しない。そこで我々は、重篤な身体疾患に罹患していない528名の自殺既遂者検体(508名の死後末梢血及び20名の死後脳)と560名の対照者検体(535名の健常者末梢血及び25名の非自殺者死後脳)のTL・mtDNAcnを定量的PCR法にて測定し、解析を行なった。

情報源: 自殺既遂者におけるテロメア長とミトコンドリアDNAコピー数の異常 | おすすめのコンテンツ | Scientific Reports | Nature Research

放松・野に咲く花のように

放松・・

「放」は、緊張や束縛を解いて、上下左右に自由に伸びる意味を表します。

「松」の元々の字は、鬆で、簡易化され、木偏の右側の「公」は、おおっぴらに開いている様で、鬆は、髪の毛のように動きがありさわさわと、葉が細く向こうが透ける様を形容したものです。

放松の結果に、リラックスや拙力の脱力、意識的でない自然さが生まれますが、放松は放松です。リラックスや脱力ではありません。意識すると、本末転倒ということになります。

放松の基本原理は「三才」です。天地人の宇宙の実相を表す言葉です。太極拳は全て三才勢で動きます。三才勢の基本修練は、内丹の「大周天」でも行いますが、武当派の楊式太極拳の大架式の套路には大周天が含まれています。それを当門では習います。

「地」は重力を発しています。地に引き込もうとする勢いです。これだけに、身を委ねると、体は地にへばりつき、立つこともできません。これが脱力です。こうなると、様々な弊害が出ます。気血は沈着し、上半身の気血は不足し、うつ病や上半身の虚血性疾患、抹消血管や神経の脆弱化、それにより脳出血や虚血性心疾患など様々な障害が出ると、内丹に伝わる導引法では戒めています。

最近の太極拳は、脱力するだけが多いので、主にこの重力に囚われてしまいます。ずしんと沈むような、「重」の感覚は、即ち双重の病となります。地に根が張るようなという、足裏の感覚はまさにこれです。今の中国の武当山の一部でもそう教えているから驚きです。まったく、これは弊害になります。

しかし、しっかり重力を感じて動くと、その「地」からの勢いに対して自然にその場にたたずむ勢いが、「天」から後頂を糸でつられるような感覚でおこっていることもわかります。これが天と地の陰陽和合、即ち「太極」の状態です。

逆に、天からつられるような勢いだけを感じて動くと、これも「浮」となり、フワフワとして地に足が付いていない状態となります。また、気血は上に滞り、下半身の気血が不足し、同じく上半身の末梢血管や神経の圧力が高まりすぎ、脳出血の引き金や、心筋に内圧が増し血圧が高まり、肺胞や心臓の疾患などが増え、下半身の虚血性の疾患が増え、神経症やヒステリー、パラノイア、統合失調症などの精神疾患が増えると太極拳の内丹ではされています。

こうなると、双方が浮き上がりますが、人間は片方でも立っていないといけないので、偏重の病となります。

この中間にあり、天と地をも巡る(大周天)ことが大切です。即ち、天と地の勢いの間に自然にたたずむ事が大切なのです。

その天と地の間にたたずむのが「人」です。これが天地人、太極拳の三才勢です。

人間の体だけで考えると、天の勢いは上半身、地の勢いは下半身に、人の勢いは丹田に備え動きます。これが三体勢です。これは内丹において小周天にて修練します。(大周天、小周天は、書籍「簡化24式太極拳で骨の髄まで練り上げる技法」をご覧下さい。)

放松とは、野(地)に咲く花のように、自然に天に向かって伸びる、地と天の間にただ立って、活き活きとした生命力溢れる姿です。

これが「放」(天地へ発散と収斂をして)「松」(人として鬆らかくたたずむ)です。

白鶴亮翅 肩こり・四十肩・五十肩を直す 太極整体

太極拳は、套路自体が自力整体ですが、特に肩こり・四十肩・五十肩などに有効な型が「白鶴亮翅」です。

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この白鶴亮翅を椅子に座ったまま、上半身だけでも、仕事の合間などに行います。上半身だけを亮翅といい、八段錦で有名な坐道(太極拳の座禅)の養生術でもあります。

パソコンなどのデスクワークは背中の両肩甲骨の幅が広がり、おなか側の胸骨が狭まる猫背に固定されます。白鶴亮翅の型のとおり、息を大きく吐きながら鳥が羽を広げるように、片方の手は外側頭上に手の平が外側に向くようにして、片方の手は外側腰の下方に手の平が下に向くようにして、肩甲骨同士をくっつけるようにしていきます。その次に、息をゆっくり吸いながら体をゆるめ、右手を上手のひらを下にしてボールを抱えるようにしてください。次は左右対象にします。これを何度か繰り返してみましょう。胸骨と肩甲骨の開閉運動だけでなく、肩甲骨の紡錘円運動により、だんだんと肩が動く範坐道亮翅囲も広がっていくはずです。

立って行う白鶴亮翅は、下半身も使って動きますので、肩を重点的に行いたい場合は、できれば座って行う坐道の亮翅がオススメです。
太極整体では、立たせて後ろから、この掛ける側も掛ける側も白鶴亮翅の形になるように擒拿術で固めながら、鳥の羽を開合するようにして行います。

体のさびと気順

 全身に気を巡らしていく。套路をするにも、対錬をするにも、この気順があってこそ太極拳です。

全身の細胞にエネルギーを行き渡らせ、新陳代謝し、酸素を消費し、又供給する。体に呼吸と気がみなぎる。

30代と言わず、20代から、いや子供の頃から、全身に気が巡り、酸素を健康に新陳代謝する能力を維持し続けることは、将来の健康な生活の保険のようなものです。

太極拳を修行するものの心得として、30年前の心身の状況が、現在の心身の状態の基盤を作っていると考え、30年後の未来を想定して、今を生きています。又逆に、30年前の状況が今我が心身の基底であることを認識して、今を生きています。

太極拳は、放鬆(全てをやわらげる)と三節(出発点・中継点・末梢の循環)という技法を用いて、気や勢と共に血や津液、酸素などを巡らします。無理な消費も、無理な取り入れも全てこれで解決していきます。

気順ができるようになると、何も無くても掌が真っ赤になるほど、気血が巡ります。
さびは、油の行き渡らないところに酸素によって酸化されて生まれます。人間の体のさびも同じで、気が行き渡らないところに酸素が滞り酸化します。

滞りの無い純粋な心(神=しん)そして、折れることの無い爽やかな気(真気)そして、健康な身体(精=せい・生理や脳も含む)を取り戻そうとする太極拳の修行は、過去も未来も今ここにある。その精神にもとづき、この瞬間を全ての命をもって生き抜いているのです。これが人生における気順であると、考えています。過去も未来もこの今にある。ここから始まる気順は過去も未来も気が巡り、そして過去のひずみや滞り、未来の心身のひずみや滞りをなめしていくことになります。

年齢に関係なく、過去未来のさびを浄化することを、今すぐに始めること、それをお勧めします。

65歳を超えると、7%の人がアルツハイマー病になります。100人中7人ですから、かなり高い確率です……しかし、「まだアルツハイマー病になる年齢じゃないから関係ないや」と思っていませんか?

それは大間違いです。アルツハイマー病に限らず、多くの病気はある日突然なるわけではありません。

30歳を超えたあたりから、気づかない間に少しずつ少しずつ、しかし確実に、体内に「活性酸素」のサビつきがたまっていき、そのダメージがある限界を超えたとき、症状が出てくるようになるのです。

つまり、症状が出るころには、かなりサビついているということなのです。

引用元: 澤田彰史:30代から始める、アルツハイマー病予防法- 毎日キレイ.

易骨・骨を健康に戻す

太極拳では、易骨といって、骨を鍛えていく修練を行います。

骨は命を終えても最後まで残る人体です。

太極拳は骨と筋を使って動くということがわかるようになると、年をとっても骨と筋だけで、十分な勢を保つことができます。

我が夜間クラスでは「叩歯鳴鼓」などの坐道で骨に気と勁が伝わる感覚を身につけ、武道クラスでは徹底的に骨を鍛えます。

太極拳の考え方では、バランス筋などを育てても、年齢を増すごとに衰えていきますから、その鎧が取れれば、やせ衰えた骨が残るので、最初から骨と最低限の筋を維持することを修練します。易筋、易骨です。

筋肉を鍛えるのも大事ですが、なぜ筋肉を鍛えるかは、その肉の内にある骨と筋を強化し、肉を離していく(依存しない)という思想に基づきます。

この記事でも筋力アップを骨折予防に良いとし、太極拳を取り上げていますが、太極拳でバランス筋などの筋力アップをはかり、骨を守るという考え方は本末転倒です。筋力が衰えた頃に、守られ続けた骨は耐えることができませんし、骨自体が刺激から守られるため、その役目を放棄します。従ってもろくなるのです。

太極拳の易骨は、どんどんと骨に振動と勢を与え続けます。いつも、骨は刺激にさらされています。その骨に刺激を伝えるのは、武道クラスにおける、外圧、外気です。相手の擒拿や摔角、拳脚の寸当てなどなどです。

気は骨髄に宿り、相手の骨髄にまで達します。ごん・ごんと我が武道クラスでは骨身にしみる感覚を体験します。

そして自らは、その骨を自由に無理なく動かすためのバネのような筋を育てていきます。易筋です。

骨と筋ばかりの人間になっても使えるのが太極拳です。そしてそのようになっても、健康を維持できるのが人間の先天です。赤ん坊には力のある肉はありません。しかし弾みの筋と、髄を生かす骨はあります。年をとっても、骨と筋を健康に保つことが大切です。

人間の骨は、適度に刺激を与え続けていると、その都度必要な成分を保持し、自らを強化していき、大事に備えます。その基本原理を忘れて、単純に筋力を強化していても、逆作用になります。

太極拳はバランス筋を鍛えますが、危険範囲を超えない、セーフゾーンの太極拳は、その反作用にも目を向けるべきでしょう。太極拳は武道です。なぜ武道なのか?

太極拳を教えておられる皆様には、ぜひもう一度、太極拳の易筋行、易骨行についてぜひ関心を持って頂ければと思います。

一人一人ができる骨折予防の具体的対策は何か。日本整形外科学会では、運動器の障害による要介護の状態や要介護リスクの高い状態を表す言葉として「ロコモティブシンドローム」を提唱し、ロコモチャレンジ!推進協議会を立ち上げているが、同会のWEBサイト(http://www.locomo-joa.jp/)では「ロコチェック」として運動器の現状をセルフチェックできるテストが紹介されている。講演では、このロコチェックの活用とあわせて、定期的に骨密度検査を行い、運動器の状態を自覚することが推奨された。また、バランス・筋力アップが期待できる運動「ロコトレ」や太極拳、転倒防止のための危険箇所の点検・改善も促された。

引用元: 健康寿命を脅かす高齢者の骨折・転倒 ~専門家が予防対策を呈示~ – MSN産経ニュース.

原因のわからない腰痛

原因のわからない腰痛が、腰痛の80%を占めているという報告があります。 脊椎に起因する腰痛は15%程度です。 原因のわからない腰痛は、すなわち原因のわからないところでおこっている訳であり、わからないとされているところを改善していけばよいのです。 太極拳の内丹術はそのようなわからないところをまず健全にします。 内丹では築基と言い、体の生理から内分泌、肉体と精神のひずみを全て正しく戻すことをいいます。 それらを色々な方法で改善してから、太極拳で本格的に奥義を教えていきます。 これらの内丹を含まない套路や、武術を繰り返していると、そのわからないところはわからないのでより悪化するのは当然です。

《古式の太極拳技法「鬆腰」などの基本技法を満載した書籍》

電子書籍→単行本→ ————————-

套路や武術練習では、必ずこの内丹を調整しながら練習をして、築基が完了したものに、より深い太極拳の動きを教えます。 この時には、原因のわからない腰痛など、又、調子の悪い体や精神などもう有りません。 私のところの太極拳クラスでは、太極拳を深める以前に、この内丹をより専門的に行うクラスを新設しました。 原因のわからない腰痛、原因のわからない不定愁訴、原因のわからない憂鬱などなど。 原因のわからないものはわからないとされているところを徹底的に正常化することが必要です。 内丹はそのわからないところを、遙か昔から経験と実証で、わかるようにしてきたものです。 内丹における精神作用も肉体作用も、現代精神学、現代医学でも科学的に立証されてきています。 原因のわからない。という何かがあれば、騙されたと思って、まず当方の夜間クラスにおいでください。 武当山が源流の太極拳の動きは、内丹技術を欠かしては成り立っていません。 内丹の備わった太極拳をぜひ身につけて、一生涯安心して行える、簡化24式の套路やもっと複雑な套路を生涯の友とすることをお勧めします。

気力が湧かないままで、どうぞ。


自殺大国日本において、最近特に女性の自殺者が増えてきています。(2012年6月8日政府の自殺対策白書)そのもっとも多くを占める原因は健康問題で全体の過半数になっています。
これらは、これといった病気ではなく、何となく活力が低下し、疲れやすさすなわち易疲労があり、今まで楽しかったことに興味がなくなってきたり(アンヘドニア)、そして何か鬱々するというものです。

そして、なかなか元気になれないというところから、食欲がなくなったり、イライラしたり、風邪をひいたような症状や、腰や膝の痛みなどと発展していき、何らかの健康に問題があるのではと感じるのです。

そして、悩みを一人で背負い込んでしまったりしてより落ち込んでしまいます。

そうなってくると、ひどい不安を招き、それらを解消するために仕事やネット。ゲーム、ギャンブルなどにのめり込んだり、アルコールを過剰摂取したり、違和感や焦りやイライラが強くなり、もうどうしようもなくなります。

そして、心気的とらわれが強くなり、焦燥感が激しくなってくると、もう誰の声も耳に入らなくなってきます。ほぼ心気症(ヒポコンドリー=hypochondria)の状態です。

これらがうつ病に移行するか、また、心身の重要な病気になるかは時間の問題です。

また、ストレスですが、MRIを使って行なった研究では、強いストレス状況下で感情や記憶の消去をつかさどる脳の部位が委縮していたことが判明したそうです。ストレスはこのような生理的な心身作用にも大きな影響を与えますから、ストレスをためておくことは、よりそれらを進行させ、または原因にもなると言うことです。

その前に、やれることがあるはずですが、病院に行くほどでもなく、漢方薬を飲もうとも、何かスポーツをやろうが、友達と会おうとも気力が湧いてきません。

 それならいっそ気力が湧いてこないまま、根本的な生命力を呼び起こす方法があります。

これが、武当派の太極拳に伝わる内丹術です。
内丹術は、完全にリラックスした状態で先天の気という生命力の気を呼び起こしていきます。
その生命力の気に押し上げられることで自然と人間社会で生きていくための気力を湧き起こしていく方法です。

太極拳は、完全な放鬆状態から、発勁ができる武道です。
放鬆状態はいうなれば、気を沈めている状態です。その状態から気を立ち上げるという技術が完成されている希な武道です。
そのために、様々な修養方法が長い歴史の中で伝承されています。
大切なことは、気力が湧いてこないのであれば、同じように気を沈めている仲間と一緒にいながら内丹術を行い、生命力自体の気を高めることです。太極拳では生命力自体の気を先天の気といいます。

後は、先天の気に押し上げられ、自然と後天的な気が起き上がってきます。後天的な気を引き上げようと無理をすればするほど、結果は悲惨なものになりがちです。
ある程度生命力が持ち上がってくれば、自分自身の「生き方」を広い視野で考え直してみるのも良いかもしれません。太極思想や道「タオ」が考え直すためのヒントにもなるかも知れません。

このように私は、自立厚生の立場から、太極拳の内丹術を積極的に提供していくべきと感じました。

私は、夕食後は妻と二人で内丹術を生活に取り入れ、そのまままどろみながら、まるで胡蝶の夢(夢か現実かわからない)のような世界を体験しながら、ベッドに入れば、入ったのも忘れるぐらいの数秒で寝てしまい、あっという間に朝を迎えています。

そこで、夜は武道練習をやめていたのですが、大阪や京都で実施していた太極拳の内丹術と瞑想を行う夜間クラスを復活することとしました。当事は瞑想太極拳クラスとして行っていました。

夜間クラスでは、一日に一つくらいは套路の型を存思(そんし)という瞑想でとても緩やかにリラックスして行いますから、楊式太極拳の套路も身につきます。生命力が立ち上がり、後天的な気も元気になれば、本格的に太極拳にも取り組んで下さい。強固な心身が呼び戻されます。

それでは、夜間クラス。ぜひ多くの方のご参加をお待ちしています。

太極整体の基本理論

■心身の動きを見直す

心身の自動的な反応、すなわち人間には癖のようなものがあります。

体の不調などは、一度それらをニュートラルに戻してしまってから、新たに、自然な心身の反応を身につけていくと、根本的な改善が見られるときがあります。

太極拳では、病気や怪我の原因となる癖や習慣を取り去り、全く最初から自然な動きを身につけることで、心身を修復し、強靱な心身を作る方法があります。

よく、武道などに入門するときは、初生の赤子として修行することを誓わされます。これは始めて生まれた赤ちゃんのように、今までの心身の癖を捨てて、正しい動きをニュートラルから身につけるという理屈です。

不定愁訴や、調子の悪い心身は一度ニュートラルに戻してしまい、それから最も理想的な心身の動きを行っていけば、一挙に改善されるということが理屈としてはわかります。

まずその前に、今までの心身の癖や習慣を、それをやめていくことが必要です。

頭や首、背中は密接に関連して動いているので、また心理的なことも影響して、人間の体は動いていますから、ニュートラルに戻すと言ってもそう簡単なものでもありません。

長期間の厳しい断食などは、そういう意味では、心身と内臓をニュートラルに戻す一つの手段です。

人間の心身は、不自然な動きも日常的に行われていれば、それを補おうとする心身が育ちます。
しかし、その不自然な動きと、それを補おうとする動きは心身に緊張や負担を与えます。そして、それに慣れてしまっているので、それを補おうとする動きから離れることはできません。従って不自然な動きに気づきません。

そして不定愁訴や易疲労、そしていつの間にか病気や怪我を招いてしまうのです。

そこで、その補おうとする動きを見つけ出し、それをやめることから始めるのですが、それをやめると、不自然な動きを補うことが無いので、疲れてしまい、より体調や怪我が悪化します。

だからといってまた補った動きに戻るといつまでも改善しません。

ですから、補った動きと不自然な動きの両方を一挙にやめてしまうことが必要なのです。

例えば、首や肩が痛いと悩んでいる人がいて、整体に行こうが病院に行こうが改善しません。実際に体を動かしてもらったところ、確かにそこが痛くなるような体の動かし方になっているからです。それは、腕や肩の本来自然に動くところが固定されて、そこが動かないように癖になっていました。もちろん痛いでしょうから、そこが痛まないようにと心理も働いています。これも癖です。無意識に痛みから遠ざかろうとしているのです。

日常生活に不具合や痛みがあったり、不快感があると、何らかの補う行為でそれを消し去って、少しでも早くなかったことにしたくなるものなのです。

自然な動きでしか動けないようにしている太極拳の型を正しく行ってみたときに、痛みや不快感があれば、それはとても重要な情報なのです。

ですから、痛みや不快感があるからと言って、そこから逃れる動きをしたり、補う動きをしてしまうと、これではいつまでたっても体の癖や心の癖が改善されることはありません。太極整体は、重傷者の場合は、痛みのある場所を直接動かさずに、そこにつながる場所を動かしながら、整体する術もあります。

根本的なところから不自然な動きを改善しないと、いつもそれを補い、痛みや不快感が通り過ぎるのを待ち、なかなか通り過ぎないことにいらだち、辛くなってしまいます。

これをいつもやり過ごしてしまう心も、癖になってしまっているのです。この時はとても大きな緊張に包まれ、この緊張がより、不定愁訴や痛み、不快感を助長していきます。膝や腰の痛みは、ひどくなるとヘルニアや損傷を招きます。

ですから、まず自然な動きができる太極整体を学び、最初は不快感と異様な痛みや、ぎこちなさに襲われるかも知れませんが、その痛みや不快感を情報源と捉え、普段、なかなか意識できない身体のことを意識し、その痛みや不快感を探し続けて、それが無くなるまで自然な動きに近づいていけばいいのです。

自然な動きで、ほとんど痛みやぎこちなさや不快感が無くなれば、そこで、自然な動きを楽しく続けていけば良いのです。痛みや不快感に目を伏せてしまうのでは無く、痛みや不快感を受け入れていくことです。

■自然な動きの太極拳

日本でとても流行っている楊式太極拳の套路をご覧になったことがあるでしょうか。多くの本が出版され、インターネットなどですぐに見ることができます。公園などでもよく見かけます。

本来のものはとても大きな動きで、とてもおおらかです。最近の太極拳教室では、その自然な動きから逃げて、痛みや不快感を補いながら小さく動くところが多いようですが、もともとは形も拘り無く、自然におおらかに動く運動です。

その大架式(大きく暢やかにおおらかに動く)の要素には、体の各部分をどこまで自然に動かせるかということがあります。

そこで、その動きをしていると、痛くなったり、不快感が表れる、体が動く限度や速さ・角度が見つかります。限度を越えるときにゆっくり動くとどうかとか、角度を変えるとどうかとか、その痛みや不快感を感じているときにどのような気持ちになるかとか、痛みや不快感の中心が見つかったり、その周辺の感じや、体の他の部分との関連などが見つかっていきます。

このような情報は、頭で感じるのではなく、心身が覚えていきます。自然な動きは太極拳という動きできあがっているので、その動きに近づいていこうとする過程でどんどんクローズアップされるのです。その中で、その情報を一つづつ改善していくということです。

太極拳の自然な動きを気持ちよく行えたとき、心身はニュートラルに戻っています。それに従って動いていって自分の不自然な癖を見つけ、心身をニュートラルに戻す方法です。補った動きはしませんから、しばらくは、自然な動きに違和感はありますが、それを楽しみながら乗り越えていきます。

■声が出ない原因

ミュージカル女優の方で、不定愁訴に悩まされる毎日の上、舞台上で声が出なくなるという致命的な症状に見舞われ、声を出そうと思えば思うほど、声が出なくなり苦しんでいる人がいました。

元々声の出し方に不自然な体の動きがあったため、それを補う動きで声を出していたところ、その補う緊張した筋肉が破綻し、心も緊張して「声を出す」と張り切っていたため、その癖でより緊張して声を出そうとしたため、その悪い相乗効果で声帯の圧迫が極度になり全く声が出なくなってしまったのです。

友人のすすめで、太極拳を取り入れた彼女は、身体の自然な動きが身について、不定愁訴は全くなくなったのですが、元々の声の出し方では昔のように大きな声は出なくなりました。

太極拳の自然体で立ち、お腹を膨らませながら息を吐く方法で発声したところ、自然な発声ができるようになりました。不自然な声の出し方を補って声を出し続けるか、元々の自然な声の出し方で、何もせず声を出し続けるか、人間の生活もこれと同じことだと思います。

人間の無意識的な習慣や癖は、何かをしようという際にそれを補う反応を生じ、この習慣的な反応を抑制する不自然な運動を行おうことから緊張を生じます。これが不定愁訴や、痛み、不快感の根本的な原因になっているのです。

脱力

本来人間は、健康な体を維持できる恒常性を持って生きています。

そのバランスが崩れたときに、病気にかかってしまうわけです。

例えば、体の中では常にガン細胞が作られていますが、発生する場合としない場合があります。

発症する原因は、心的ストレスや暴飲暴食、肉体疲労など何らかの原因からくる自然治癒力の低下にあります。この自然治癒力の維持こそ、最近話題となっている予防医学と繋がってくるところでしょう。

この自然治癒力とは、東洋医学で言う『気』(生命が活動するためのエネルギー)が全身を流れてクリーニング&メンテナンスをしてくれる活動のことです。

『気』は、緊張している部分は避けて通る習性があります。つまり、筋肉・内臓・脳の全てが脱力していることが自然治癒力を高める最大のポイントになるということです。

ところで、『気』には二とおり有ります。病を作るような悪い気と、自然界や宇宙と繋がっている良い気です。

脱力により全身のツボが開かれていると、そこから自分の中の不要な気『邪気』を排泄し、自然治癒力を助ける宇宙自然からの気『生気』が入ってくるのです。

◎筋肉の脱力◎

太極拳でも、『用意不要力』という言葉があります。『意を用いて、力は要らず』という意味です。早起きして公園に行った日は、その言い伝えどおり体の力を抜き、ゆっくりした動きの中でエネルギーを全身にめぐらせ宇宙の気と繋がる感覚で太極拳を行うと、体があったかくなり、自然と一体になった体感ができます。これこそ、本来の人間の姿なのでしょう。しかし、普段の生活では、いかに無意識で慌ただしく動いていることが多いことか。知らぬ間に心や体を緊張させてしまっているのですね。そこで、縮んでいる筋肉に体重をかけ、ねじったり伸ばしたりして筋肉や関節を元の脱力した状態に戻すことのが太極拳を使った自力整体なのです。つまり、体が脱力して初めて整体が行われ、ゆがみやこり、痛みを無くせるということです。

■自然な脱力状態をつくる

体のゆがみは人それぞれで、そのゆがみによって全体のバランスがとれている場合もあります。

しかし、単なる生活習慣による癖で起きたゆがみは、体に不調をもたらします。

その一番の原因は、急いだり、頑張って力んでしまったりすることです。急ぐと、上半身に力が入って緊張し逆に下半身の力が抜けてしまいます。この様な無意識の習慣が、ゆがみになってしまうのです。背骨を中心とした体の中心軸を保ち、しなやかでありながらどっしり地に足のついた下半身に重心がある脱力状態を作り出すには、先のことをあれこれ気にもまず、今この瞬間に焦点を当てて楽しむこころ構えが一番大切です。そして普段の行動においても、次のように少し意識することで脱力状態を増やすことができます。

<歩き方>

代表的な歩き方としては、二とおりあります。一つは、腕を前後に振りながら腕と足を逆方向にして歩く『行動型股関節歩行』で、西洋型とも言われています。

もう一つは、腕を振らずに同じ側の腕と足を同時に出して歩く『ナンバ歩き型骨盤歩行』で、日本型と言われるものです。この歩き方の違いは、西洋人と日本人の体型の違いからきたものなので、日本人にとって一番緊張のない歩き方としては『ナンバ歩き』なのでしょうが、結果的にその人にあった長く歩いても疲れない歩き方が理想です。

そう言われてみると、日本の時代劇では、みんな上半身が板のようにまっすぐな状態で歩いていました。初めは着物が着崩れないための楽な歩き方でそうなったのかと思いましたが、体型的な理由があったのですね。また数年前、陸上競技の短距離走オリンピック選手が、今まで腕を前後に振っていた走り方のフォームをナンバ走りに変えたところ、タイムがグッと縮まったといったドキュメント番組を見たことを思い出しました。

<荷物の持ち方>

疲れない荷物の持ち方は、できるだけ体に近いところでものを持つことです。特に、ウエストポーチやリュックサックのように体の中心部に密着させている荷物ほど、軽く感じられます。確かに、山歩き用の大きなリュックを背負うときは、重量30㎏くらいあるものなのに、ウエストベルトを締めて荷物と体を密着させると、ほとんど重みが感じられなくなります。重いものを持ち上げる場合も、荷物を体に引き寄せて体の中心と荷物の中心を合わせると持ち上げやすいです。

逆に、体の末端つまり手先に持っている荷物ほど、重く感じられます。買い物袋をぶら下げて持つときは、小指と薬指で袋を引っかけるようにして持つと、肘がしまって肩に力が入らないので脱力して持つことができます。私も実験してみましたが、肩と肘は張らないので楽な感じです。しかし、普段あまり使わない指に力が入るので、そこが少しつらいところでした。

◎内臓の脱力◎

体の筋肉の脱力は分かりやすいですが、自然治癒力を高めて健康を維持するには、内臓の脱力も欠かせません。それには、空腹状態で脱力した睡眠時間が重要になってきます。快眠・快便によって内臓を脱力させ、食事に関しては、栄養のとりすぎは体調不良の元であると言う考え方です。実際、人間の体は空腹には強いけれど、過食や満腹には弱くできています。長い歴史をさかのぼって、狩猟生活の時代を想像すればわかることです。人間の内臓は、一日のうち2時間くらいが腹八分目で、あとは空腹であることが当たり前として作られているのです。現代人は、昔の人と比べて約3倍の内臓エネルギーを浪費しているそうです。私たちの老化や死は、老廃物の蓄積によるものです。体内で発生する老廃物の処理が出来ずに溜まると毒素に変化し、その毒素が体内組織の細胞分裂を阻害していくと死に至ります。多く食べるから内臓が疲れて老廃物や毒素が溜まり、少なく食べることで老廃物や毒素が排出されやすくなるのです。

◎こころの脱力◎

普段の生活で感じる様々な不安、恐怖などは、素直に受け入れ、それにとらわれない生き方が重要です。先のことを不安がって妄想したときには、何かしら心の動きが生じているはずです。それをしっかり自覚して受け入れることによって、新たな選択が生まれてきます。そしてやると選択したものは覚悟して楽しんでやることが、脱力したこころの生き方です

呼吸は生きる。息(いき)る。生命の要。

最近の話題作映画「ハプニング」、日本でのメインフレーズは「人類は滅びたいのか」。

この映画の中では、植物が何らかの有害物質を空気中に放出し、人間がどんどんおかしくなり死んでいきます。この映画が提供しようとしているメッセージは人類と植物の関係から、人間の生命の営みである呼吸に深く関わっていくことで、生命の根幹をも脅かすかも知れない大気という空間に目を向けたもののように思います。

もともと人間にとって、大気中になくてはならない酸素は地球誕生時の大気には存在していませんでした。しかし、植物のような光合成を行うものが出現したことで大気には徐々に酸素が蓄積されていきました。まるで植物が、地球を制覇しようとするような勢いだったという人もいます。

しかし、このように、本来、酸素は強い酸化力をもった毒性の強い気体でしたが、一部の生物は酸素を利用した酸化過程を通じて大きなエネルギーを利用できるようになったのでした。これはマイナスをプラスに転換するとも、危険を克服したとも言える劇的な事実でした。そして生物と植物の共存が成しえたのです。現在、酸素を利用した代謝のできる生物は細胞内のミトコンドリアにより炭水化物を酸化し、最終産物として二酸化炭素 (CO2) と水を排出します。これが呼吸です。この様な共存と調和が生み出したシステムでもあるのです。

酸素という毒物を、体内にいるミトコンドリアが代謝し、無害にする上、エネルギーをも生み出すのです。排出される二酸化炭素は、植物によって光合成に利用され、酸素を生み出すのです。これで循環という自然代謝できあがるのですが、そのバランスが壊れつつあるのが現状です。

同じく、人間の体内でも同じ事が起こりえるのです。ミトコンドリアの代謝力が弱まると、酸素が余分になり活性酸素が生まれたり、様々な障害が起こります。酸素の毒性が体内を駆けめぐります。呼吸では糖類は二酸化炭素 (CO2) および水にまで分解され、その過程でエネルギーの元がミトコンドリアで生産されます。

この様な呼吸を重要と捉え、東洋では昔から、吐納法や気功法と言われる呼吸術がありました。

腸及び周辺にある組織の温度を上げて活性化させ、様々なホルモンを生みだし、ミトコンドリアの代謝を正常にして、本来の正常な呼吸による代謝を循環させようというのがねらいです。

逆腹式呼吸の太極拳の吐納法

この逆腹式呼吸という武術ならではのすごく優れた呼吸法は、呼吸で一定の腹圧を作る訓練です。王流では胆式という型で行います。

吸気

まず、足を閉じて立ちゆっくりと手のひらを上向きに翻しながら脇の下まで手のひらを持ってきます。ここまで息を吸う動作です。逆腹式呼吸ですが、肺を膨らませるイメージではなく、横隔膜をおなかに下げていきながら胸郭を広げる感じです。おなかがぎゅーと圧縮され、おなかの裏側背中に圧力がかかります。おなかの圧力が増します。呼吸を意識するよりも動きと呼吸が一致し、丹田(臍下のおなか)が小さく縮むイメージを持ってください。深呼吸と同じですが、肺を広げるのではなく、横隔膜を下げ、胸郭を広げます。平均3ℓはあるといわれる予備吸気です。脇の下まで吸いきったら、手をもう少し外に翻しながら肩を上げず後ろへ引き、よりおなかに圧力を加え胸郭を最大に広げてください。あくまで動きにつられて吸気します。深呼吸よりも深い吸気になります。このより深い深呼吸は体の末梢のミトコンドリアまで酸素を送り届け、エネルギーとなり、体の生体活動を活性化します。その上翻したときに次の排気のための弾性すなわち、均衡反射(ニュートラルな状態に戻すための反射)を生みます。これが漏気(ろうき)といわれる動作です。

呼気

次により強く通常の基準値に戻ろうとする力 (均衡反射力)を利用して、ゆっくりと長い排気を行います。手を上に向けたまま脇からゆっくりと腰までおろしていきます。横隔膜を緩和させる感じです。医学的には横隔膜は排気の時に緩和してドーム上に上昇し、吸気の時に収縮して下降します。鼻からゆっくりと少しずつはきます。出来るだけ長い方が良いです。そしてウエストのところで吐ききってください。その時におなかが膨らむ感じで丹田の中に大きなエネルギー玉が出来ていくイメージです。腹腔が膨らみ圧力が高まることで胸郭が狭まる感覚です。この時の圧力は小さくなったときの圧力と膨らんだときは同じ圧力を保つようにします。

吐ききったのですが、まだ残気が肺の中に残っています。これを残気を吐けるだけ吐きます。腰にある手を下により一気に下ろして残気を吐きます。この呼吸法で肺の能力は一段とアップします。デトックスという毒素排出に役立ちます。排気は脂肪を燃焼させるので、より深い排気は脂肪の中にためられた毒素も排気と一緒に排出されます。多くはこの残気が肺に滞ることにより血が汚れる原因にもなっていますから、それも改善します。又、すぐに吸気に戻り数回循環して繰り返すと体にみるみる元気が戻ります。(元気になったら止めてください。それ以上は過換気になります)