ホーリズムと太極拳

 スポーツジムで行われるヨガ体操の一つに、ハタ・ヨガがありますが、『ヨーガ・スートラ』に代表される伝統的な古典ヨーガや中世以降発展した本来のハタ・ヨーガとは全く別物です。現代体操ヨガの一つであり、その直接的な起源は、キリスト教を伝道するYMCAやイギリス陸軍によってインドに輸入された西洋の身体鍛錬や体操法の影響を受けて、20世紀初頭の数十年間にインドで形成された「創られた伝統」と呼ばれています。代表的な創始者には「現代ヨガの父」と呼ばれるティルマライ・クリシュナマチャーリヤがいて、現在のヨガのほとんどがこの流れをくんでいます。太極拳の伝統太極拳や制定太極拳のような「作られた伝統」の歴史と全く似ています。

この人物が重視したポーズにサルヴァンガーサナ(肩立ちのポーズ)やシールシャーサナ(頭立ちのポーズ)がありますが、ヨガの源流は古代文明から発展したシッダ医学であり、シッダ医学からのヨーガ理論では、このサルヴァンガーサナは健康体が総合力を高めるために行う、アシュタンガヨーガの一つです。従って、整体(ホーリズム観による整体のこと)されていない心身がこれを行えば、もちろん心身に大きな無理がかかります。これで体の各部を個別に調整しようとするなら、色々な要訣を課して無理矢理心身をこのようなポーズに整えることになります。これが体操ということです。これも現代太極拳と同じで、現代太極拳で心身の支障を高めている人が多くいる事も頷けます。

最近、世界で最も権威のある医学論文で立て続けに、痛みの改善には太極拳に勝るものは無いと発表されていますが、この研究協力者である太極拳のグループは戦後にアメリカに移住した一派です。これ以上書くと、差し障りが多いのでネット上では書きません。

最新論文では、ことごとくヨガよりも効果があると論文で発表されている太極拳でも、痛みなどがある健康体でない心身の場合には、その以前に整体が必要です。日本で言う整体とは全く違い、全体論というホーリズムの状態を得ることです。いわゆる太極の状態であり、科学的にはその状態を『創発』と言います。そこは陰と陽の最高域の臨界部分にある融合点にある『無極』の域で保たれます。世界の最高価額研究所であるアメリカのサンタフェ研究所では、今まさにこの臨界点の域を『カオスの縁』として、多くの最高域の生命学者、量子、物理学者が集って、複雑系や人工生命、生命の進化などの研究において着目しています。その内、この論文が多く発表されるでしょう。そこで太極拳の太極理論が多く証明されることになります。この太極理論に従った整体が『太極整体』です。

この『太極整体』で心身が基本的な状態に戻ります。ここで一過性の必要痛以外の心身の慢性の痛みは無くなります。太極拳の内丹では築基と言い、それから、太極拳の本格的な導引法を行っていき、最終的には本来の人間の能力を臨界まで取り戻します。これを還虚と言います。ここまで来れば、慢性的な痛みとは無縁だけでは無く、最高域の活力で人生を生き抜けます。

心身の整体(ホリズムに基づく創発状態のこと)ができていない状態でサルヴァンガーサナなどのポーズを行う事は、バラバラの心身が個別に無理をしながら連帯責任のようにその姿勢を保ち、いずれ各部が無理な損傷を起こし全体的に崩壊していくことになります。

よく見るサルヴァンガーサナやシールシャーサナのポーズでは、各身体の部位が孤立し、お互いが補い合いながら、『今度は誰が負担する?』「あなた痛いの?私が助けてあげる』『今度は私が痛くなってきた』と各体の部位が、負担をしあいながら頑張っている痛々しさが伝わってきます。

ホーリズムは、個々が全体として纏まり、全体で痛みを分担します。この状態にあるのが『創発』であり、ヨーガでは「ホーリズム」であり、この創発という太極の状態を発す域が太極理論では『無極」であり、ヨーガでは『無』であり、科学的には『カオスの縁』なのです。

ヨーガの語源は、「牛馬にくびきをつけて車につなぐ」という意味の動詞根√yuj(ユジュ)で、英語ではyokeですから、意味はくびきであり、太極拳では導引のことです。このような状態は、牛の右足に綱を付けて引っ張っているようなもので、牛は姿勢を保つためにどこかの部位に無理を課して前に進みます。現代太極拳でも、様々な姿勢の要訣を課して無理に形を整えようとします。くびきや導引は、牛の角の二つに綱を付けて、牛の三関(玉沈・夾脊・尾閭)を通してまっすぐに引っ張ります。ここで引っ張る人と牛の全身が一体となった創発と、カオスの縁によって牛は「すっす」と前に自然に進みます。人も牛も心地いいのです。これが本来のヨーガであり、太極拳の導引なのです。

局部に痛みがある人は、そこに対症療法的施術を試みても、他がそれを負担するだけです。いたちごっこどころか、どんどんと各部が疲弊し取り返しが付かなくなります。

痛みを元から解消するには、まず、ゆっくりと太極拳では坐道を行い心身を全体的に一体に戻すことです。ヨーガでは『シッダ・アッサーナ』です。現在のヨーガの座り方とは真逆の座り型です。

 『シッダ・アッサーナ』の結跏趺坐もこの姿勢を無為自然に維持できればの話で、無理な意識的行為の結跏趺坐で姿勢を壊すのなら、それを行えば大変心身に悪影響を及ぼします。随って、足は合わせなくても良く、あぐらのような大座から始め、姿勢が無為自然に現れる結跏趺坐ができるようになるまで段階を進みます。今はだれでもが早急に結跏趺坐に挑戦していますが、結跏趺坐など他の体の部位に無理をかければできます。それは大変危険です。体が柔らかい人でも同じです。簡単に結跏趺坐ができるということも落とし穴で、しっかりと空気の入ったゴムまりのような全体観を得るには全体的な一体感が必要で、そこだけが走る(勢いが抜けてしまう)事になり、空気が抜けたゴムまりのようになります。空気の抜けたゴムまりはしわができ、そこに問題が起きます。

太極拳の大架式は高度な自力整体であり、導引法でもあります。太極拳の養生は、武当山の十方叢林が総合病院的役割であった頃から、古代のシッダ医学からの理論がインドや中国の医学に伝承し、その理論を武道にとりこんだ医武同源のホーリズムです。

十方叢林では、原因不明の痛みを持つ人のために、特別なカリキュラムがありました。その武当山が無くなってからいままでは、人々が太極拳で痛みがに取れるとは確実に信じきれないため、そのカリキュラムが注目されることはありませんでしたが、最近は論文で次々と立証されているため、今後は注目されるかも知れません。

そうなると、まがい物も多くでてくるかも知れませんが、この効果は私がすでにカリキュラムに基づき実証していますから、近々世に出したいと思っています。一時的な必要痛がない限り、痛みに対しては確実な効果があるというのは、すでに医学論文などで発表されていますから、多くの人の注目を浴びることでしょう。

これは、太極理論に秘密があり、これこそがホーリズムなのです。ヨーガも、シッダ医学の原点に戻り、その理論を採用した『ヨーガ・スートラ』に立ち戻れば、ヨーガも痛みに効くということが立証されるかも知れません。太極拳も同じです。太極拳が最も痛みに効果があると発表されていますが、『作られた伝統』では、その効果は、体を動かさないよりも動かした方がいい程度で、そして、危険が伴うので無理はしないことという要訣が留意されます。

総合的にホーリズムされた状態を求める人間の生命体の痛みは、その状態が崩れたために有るものです。従ってその痛みを消し去るには、『太極の状態』『ホーリズム』「無極」『カオスの縁』の理論が体系化され、それを実践することができる技術が必要であり、現代体操ヨガ、現在太極拳などのように、その理論の一部だけでその全体を形作ろうとするところに、多くの問題が生まれるのです。

今後、サンタフェ研究所の研究も進み、その研究発表が、本来のヨーガや太極拳の理論の一部を証明していくことでしょう。しかし、証明されなくても、すでに分かっているだけでも1万2千年前からも経験科学で実証され続けているこの理論こそが、いまも、太極拳の『太極整体』などの導引法として確実により体系化されて伝承されています。

この壮大な実証理論を現代科学で立証し尽くすには多くの時間を費やすでしょうが、太極拳やヨーガなどの本質の一つ一つが、誰にでも認められるような根拠を与えられることは、今後の人々の真の健康増進に役立つことだと思います。

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