夜は心身の内を見直す。

 太極拳の夜間クラスでは、7時頃に夕食を終え、その後は感受性を高め、自分の心身の内をことごとく見つめ直す時間です。
この心身の内を見つめ直し、丁寧に練り上げて、丹としていくことで、昼間の活動の中心にしっかりと備えることが狙いです。

武道においても不動心や、強力な胆力、平常心、内勁には無くてはならない丹です。もちろん套路を行うときにもその丹を練り上げながら練習するので、健康効果だけで無く、自信あふれる精神や、精力あふれる整った生理や肉体、まろやかな弾力のある心が育っていきます。健全な丹があれば、ただ無為で自然で人生を謳歌することができるのです。

その心身の内を感受性を高めて観じてみると、身体内には十二経絡の循環というネットワークが存在することを知ることができます。十二経路だけでなくそれらを連携する経絡(奇経八経)もあります。経絡は現在科学でも検証され、経験的に実験された実証を証明しつつあります。経穴はそのネットワークの症が体表に現れる部分でもあり、また、フィードバックできるところです。

夜間クラスでは、まず立禅や坐道・動功を通じて、そのネットワークの流通を感受性を高めながら感じ取り、活性化していきます。

まず、臍下の指二本の幅くらいのところに気海(きかい)という経穴があります。その奥が、臍下丹田(お腹と背中の中間あたり・下丹田)で、元気の源で、丹の元になる場所です。丹田で火が焚かれて、その少し上にある腎臓あたりが温まるイメージです。この場合は、副腎が内分泌器になります。経穴は中脘(ちゅうかん)です。ここで元気によって焚かれた腎にあるエネルギーはわき上がり、波動が始まります。まずネットワークに走るエネルギーの波動(気)はこのようにして始まります。

 そこから、体の中心を走る、衝脈(しょうみゃく)という経絡を通って、会陰という経穴の対応部分(性腺)まで波動は下ります。会陰は肛門より少し前の体の中心です。性エネルギーを高めます。そこから尾閭(びろう)という尾てい骨の先から、脊椎に沿っている夾脊(きょうせき)という経穴のある経路を通過しながら頭の後ろにある、頸椎の最終部分、すなわち背骨と頭蓋骨の結合部分まで到達して、玉沈(ぎょくちん)という経穴を抜けて、頭のてっぺんの百会(ひゃくえ)に到達します。ネットワークは体の表面も含めて内部深くも走っていると考えます。平たく言えば、背骨を通じて、脳の内部にエネルギーの波動が到達すると考えるとより現実的です。

百会はメラトニンという心身にとても有益なホルモンを分泌する松果体の経穴です。そこから顔の前面の眉と眉の間の印堂(いんどう)という経穴に到達します。そこは脳下垂体の経穴であり、百会など頭部の督脈(とくみゃく)を駆け巡りながら、視床下部や、脳の中心部にある泥丸(でいがん)に到達します。ここは上丹田であり、脳の内側と考えればよいと思います。古皮質や旧皮質の脳が活性化する感覚です。吐納法の場合は、ここまでは吸気で運びます。エネルギーの波動の末端は人中という鼻の下の中心です。

上丹田で練られたエネルギーの波動は喉を伝って甲状腺まで到達します。その経絡にある経穴は、口の下の中心の承漿(しょうしょう)、喉の中心にある廉泉(れんせん)です。甲状腺から抜けて、次に、免疫系の要である胸腺に到達します。経穴は天突(てんとつ)を抜けて紫宮(しきゅう)です。ここで、甲状腺と胸腺のあたりのエネルギーが活性化します。ここが中丹田です。

そこから、お腹の第二の脳と言われる太陽神経叢に波動は向かいます。その最上部にある経穴は中脘(ちゅうかん)で、膵臓にある内分泌器を活性化します。そして、腎にエネルギーの波動は戻り、その波動を受けて、臍下丹田にある元気がより焚き上がります。そしてその周辺の太陽神経叢が活性化します。吐納法の場合はここまでが呼気でで運びます。これの連続で、どんどんと各丹田を焚き上げていきます。ここまでが小周天(しょうしゅうてん)と呼ばれる太極拳の内丹術です。

以上が体の中心を走る大きなエネルギーの波動です。その波動により、体中の全経絡に波動が伝わり、あらゆる臓器を活性化します。
夜間クラスでは、いつも他のクラスでの予備運動として行う指龍(手の指を順番に回す運動)をより綿密に、そのネットワークの確認をしながら行っていきます。
わき上がった腎のエネルギーの波動が、左右へ分かれまず肺経に流れます。手の親指が井穴ですからそこを回します。そして大腸経、指龍では手の人差し指を回します。そこから胃経です。井穴は足の第二指へ抜けます。そして、足の親指から脾経に入って、心経に合流して、手の小指の内側の井穴に抜けますので、そこを回します。そこから、小腸経(手の小指の外側が井穴)に伝わり、膀胱経に合流して足の小指の外側の井穴に抜けます。そして足の小指の内側で腎経に伝わり、心臓の周辺の心包経へ合流します。井穴は手の中指にあるのでそこを回します。心包経は三焦経に伝わり、体の支持組織の隅々まで波動が伝わります。井穴は手の薬指にあるのでそこを回します。そこから交感神経のバランスも整えて、胆経と合流して足の第四指の外側の井穴に抜けます。そして足の親指の内側に井穴を持つ肝経に伝わり、また腎に戻ってきて、統合され、この繰り返しが、エネルギーの波動を増幅していきます。これが太極拳の内丹法です。
このように、経絡のエネルギーの波動の循環を活性化して、全経絡に均衡を取り戻すと、原因不明の痛みや各種違和感、不定愁訴、不安や焦りなどを消失させ、体の末端にまである体細胞を蘇生、活性化するような感覚も取り戻すことができます。

内丹法は、動かないところも、エネルギーの波動が行き渡らないところも無いとする、太極拳の勁の理に整合するために、血液や内分泌、神経系統はもとより、そのような導管を持たない腺の循環経路と、その媒体である支持組織まで波動を及ばせることを積極的に経絡学説にもとづき実現しようとするものです。

このような循環を取り戻すと、この感受性は、大周天(だいしゅうてん)という、天と地の気との循環も感じ取れるようになります。大周天については、又、別に述べます。

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