太極拳は線維筋痛症の症状を軽減する/日経BP社 日経メディカル Online

 武当山が壊滅されるまでは、太極拳の発祥の地である武当山には、十方叢林という道観があり、そこには中国中から体に強い痛みを訴える人が毎日多数訪れていたそうです。
古代のインドのシッダ医学からアーユルヴェーダ、そして中国に渡り中国医学と伝承されてきた医武同源の思想が武当山によって集大成され、まるで十方叢林は総合病院のような有様であったと、私の師が話していました。

そしてその十方叢林では、各地から武術家も集まり、導引法や整体が日夜行えわれ、専門的な学校としての機能も備え、武術と医学の理論が経験学的な研究を中心に行われていたそうです。

武当山は、精神疾患の治療としても有名でしたが、最も多く訪れた患者は『体の強烈な痛みで、その原因が分からないもの』でした。
そして、それを治療する者は、私の師や道士だったそうです。

まず点穴と推按や按摩などで局所を対症的に治療し、その後全体論(これを整体と言います)で、整体(師は外丹と言っていました)を施します。ほとんどは擒拿術と同じで、加減により整体か擒拿かということです。寝ているときの整体(地)、座っているときの整体(人)、立っているときの整体(天)を合わせて三才法といい、完全な理論体系があります。その内の寝ているときの整体が日本には多く伝わっているようです。寝ている状態を整えるので、楽であるのはあたりまえで人気があるようですが、実際は立って活動しているときに体の状態と寝ているときの状態は、重力を受ける状態が文字どおり天と地ほどの差があるので、寝ている状態を整える整体に偏ってしまうと問題があります。立って行う整体は活動状態を整えるため、楽ではありませんが気持ちのいいものです。しかし、整体にリラックスを求める人には人気が無く、あまり流行っていないようです。その天と地の間にある整体が人を整える整体であり、三関(尾閭・夾脊・玉沈)という総合体の要を整えます。これが坐道における導引で、多くある内の8つほどを選んで八段錦などとして流行っています。

そして体が整えば、次は甩手を教え毎日行わせます。ほとんどの人はこれで痛みが取れ帰って行きますが、甩手を毎日行うことを日課にしなくてはならないので、怠る者がまた戻ってくるようです。
次に四正手(掤履擠按)と四隅手(野馬分鬃)、そして手揮琵琶を教え、手揮琵琶で五行転身を行うまでを教えます。これを続ければ大概の者は痛みが無くなり、また出て行くのですが、怠る者は戻ってきます。
これだけ続けても痛みが完全にはなくならないものは、道家となり、徹底的に導引法を身につけます。これが太極拳のゆっくり動く套路です。
この套路で存思を行うため、心の状態も改善されます。痛みを起こす疾患には大概がストレスなどの心理的問題があります。その後、坐道や、必要とあれば外丹を施し、後は内丹術を行います。

太極拳が今回の論文のような痛みに相当な効果を及ぼすことなどは、20世紀半ばぐらいまでの中国の人は皆知っていました。楊澄甫の楊式太極拳が流行したのもその理由が一つです。

太極拳の多くの健康効果の内、眼に見えて効果を現すのが痛みの改善です。これは痛みが無くなるからです。太極拳で体が元気になったなどは、総合的な感覚であり、漠然としていますが、痛みは有るところから消え去るわけですから、てきめんに効果を実感できます。
しかし、一般に普及する太極拳でも、逆に膝や腰の痛みを覚え、また助長する人も増えているようです。従って、太極拳だからそのような効果があると短絡的に判断するのも危険です。

論文によると「世界的に、18~65歳までの一般集団の2~4%が線維筋痛症だといわれているが、この疾患を治癒する治療法はない。」としていますが、武当山の医武同源に基づく太極拳は、このような痛みに対する効果だけでは無く完全に治癒という言葉を使っていたようです。

今回の研究により、より太極拳の医武同源に関する確かな探究が進み、多くの人の健康に役立つことを望みたいと思います。

線維筋痛症患者に対する非薬物療法の中心はエアロビクスとなっている。米Tufts大学のChenchen Wang氏らは、線維筋痛症患者に対して太極拳とエアロビクスの症状改善効果を比較するランダム化対照試験を行い、エアロビクスよりも太極拳の効果が上回っていたと報告した。結果はBMJ誌電子版に2018年3月21日に掲載された。
-中略-
これらの結果から著者らは、太極拳の線維筋痛症患者に対する症状改善効果は、長期にわたってエアロビクスと同等かそれ以上であり、多職種医療チームによる線維筋痛症患者の治療プログラムの一環として太極拳を検討すべきだと結論している。なお、この研究は米国NIHなどの支援を受けている。

情報源:太極拳は線維筋痛症の症状を軽減する/日経BP社 日経メディカル Online
原題は「Effect of tai chi versus aerobic exercise for fibromyalgia: comparative effectiveness randomized controlled trial」、概要はBMJ誌のウェブサイトで閲覧できる。Effect of tai chi versus aerobic exercise for fibromyalgia: comparative effectiveness randomized controlled trial

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