夜明けである。
光の中に、暗闇がしみ出してくる。夕暮れである。
今日も人が死に、人が生まれる。
何かが生まれ、何かが消えていく。
この時が生まれ、この時が消えていく。
なぜ、太極の拳法なのか。
この陰陽の無常がわかれば、それが明らかになる。
だから太極拳の套路では、虚実、陰陽、夜明け、夕暮れ、誕生、死亡、目覚め、寝入りのような移り変わりを、滔々と繰り返す。
すると、必ず、陰陽の無常が分かる。
… 続きを読む 珍しく、いつも太極拳の套路を行う公園には行かず、すぐ近くの小さな公園へ。
小さな公園を覆い被せるように、桜が満開だ。
いつものように、長い套路をゆっくりと始める。
空気が体の内に染み渡っていく。細胞たちが細胞たちと話し始める。桜たちも、空気の粒も全てがつながる。
凌空勁、太極拳の最高の極意である。空間を越えて及ぶ、自然な力のことである。
この套路のひとときが、凌空勁を知るための大切なときである。
だから套路はゆるやかにやる。… 続きを読む