夜明けと夕暮れ《太極拳三昧》

暗闇に、光がしみ出してくる。
夜明けである。
光の中に、暗闇がしみ出してくる。夕暮れである。
今日も人が死に、人が生まれる。
何かが生まれ、何かが消えていく。
この時が生まれ、この時が消えていく。
なぜ、太極の拳法なのか。
この陰陽の無常がわかれば、それが明らかになる。
だから太極拳の套路では、虚実、陰陽、夜明け、夕暮れ、誕生、死亡、目覚め、寝入りのような移り変わりを、滔々と繰り返す。
すると、必ず、陰陽の無常が分かる。
続きを読む

凌空勁《太極拳三昧》

肌寒い朝。

珍しく、いつも太極拳の套路を行う公園には行かず、すぐ近くの小さな公園へ。

小さな公園を覆い被せるように、桜が満開だ。

いつものように、長い套路をゆっくりと始める。

空気が体の内に染み渡っていく。細胞たちが細胞たちと話し始める。桜たちも、空気の粒も全てがつながる。

凌空勁、太極拳の最高の極意である。空間を越えて及ぶ、自然な力のことである。

この套路のひとときが、凌空勁を知るための大切なときである。

だから套路はゆるやかにやる。… 続きを読む

張り子の虎《太極拳三昧》

套路の型を覚えるのもいい。しかし、型の示意を知らなければ、張り子の虎のようなものだ。
示意は心の示すところ。無意識の心は何をしようとしたしたのか。
示意は型の用法である。
示意は経験すれば明らかになる。だからこそ、対錬で招式をする。
招式は、式、すなわち型に導く為の、用法を掛け合う仮想実戦の想定練習である。
そして、招式が連続して変化し自由自在になる。散手である。
散手を臨機応変に掛け合う、散手対打で練り上げる。
続きを読む