太極拳の神髄・張三峯の「無根樹」が全てを語る

『無根樹』は、武当山にて古代からの太極功を太極拳として集大成した張三丰によって書かれた詩で、24章から成り立っています。張三豊はこの詩的な内容は、側近の者にしか理解できなかったため、更にかみ砕いて、無根樹100首を創作して、来山社や太極功(太極拳を含む太極道法の全て)を習う者達に配布しました。例えば、無根樹100首の第1首は下記のとおりです。
【第1首 原文】
無根樹上花正開 紅塵一去不回來 勸君莫戀花間酒 … 続きを読む

武当山の徐本善が作った太極拳の套路に合わせた物語

 私の太極拳の師は、かつて大阪最大の任侠組織で「代貸」を務めていた私の祖父の用心棒をしていた中国人です。

祖父の組織は博徒と色街の他、大阪において全日本プロレスを発足し、大阪歌舞伎座の運営、とび職や清掃業なども行っていました。また、初代警視総監・鈴木氏とともに、大阪の治安維持にも深く関わっていたと自負していた組織です。

その中国人の師・王(おう)師(1905年〜没年不詳)は、当時の中国・武当山で道総を務めていた徐本善(1860〜1931年)の側近でした。様々な事情により、王師は上海から児玉誉士夫氏らのつてを通じて来日し、神戸の組織(現在の最大手暴力団で、長は全日本プロレス発足時の副会長)を経て、私の祖父のもとに身を寄せました。… 続きを読む

書籍出版10周年を迎えて──次なる一歩、「楊式85式太極拳」の真髄へ

2014年に出版した拙著『簡化24式太極拳で骨の髄まで練り上げる技法』は、おかげさまで多くの読者の皆様に支えられ、出版10年を超えることが出来ました。本書では、24式太極拳を通じての「行気(ぎょうき)」の技法をも紹介し、すなわち“気”を効率的に全身へ巡らせ、骨の髄にまで浸透させる武当山伝統の体得法を初めて公開し、多くの太極拳愛好家の方々に新たな修練の視点を提供できたと自負しております。

現在私は新たな書籍の準備に取り組んでいます。「武当山伝統の楊式85式太極拳」この奥深く優雅な套路の中に息づく、本格的な「行気」の技法を、今改めて現代の言葉で、かつ体系的にご紹介しようとしています。… 続きを読む

医武同源・楊式太極拳の招式は雷法という導引(気功)


例えば、この招式、鳳舞毁山。勢法は85式の終盤の転身擺蓮です。

転身擺蓮の套路で行われる行気は緩やかな套路の動きの中で、有益な内分泌を身体の中に沸き上げていきます。

行気での経絡は、まず手少陽三焦で、体のエネルギーの流れに関わる経絡で、身体の各部分を調整し、特に熱や湿気のバランスを整える役割を担っており、套路にて、手少陽三焦を整えることは、身体の中でのエネルギーの循環を促進し、これにより、免疫系が強化され、風邪や感染症から守る役割を果たします。… 続きを読む

85式太極拳・進歩搬攔捶の輪拳という発勁

本日の夜間クラスは、白蛇吐信から進歩搬攔捶。進歩搬攔捶の搬から攔捶への過渡式にある、右拳の動きは「輪勢」という円軌道によって動く。この輪勢で打ち込む捶は下方から後方、上方から下方への円回転から発せられるので、全重心が上方から下方へと乗っていく発勁となる。その上次の左盼によって偶力(十字勢)も加わり、相手の極点に全重力を持って差し込むという効率的な鑚拳となる、太極拳独特の理を持った発勁となる。輪勢を持っているので輪拳とも呼ばれ、相手の突きをこの輪拳の最初の下方から後方の円回転で全重力を相手の突きに乗せて後方に運ぶので「搬」となり、相手は引き込まれるように崩れながら、鑚拳を打ち込まれる。招式として行うこの技は、「開山鑿洞(かいざんさくどう)」で武当山では日常的に招式として寸当てで行っていたそうです。… 続きを読む

楊式太極拳の技撃の実戦の参考動画がありました


この女性の遠心力で拳に全重量を乗せて振り込んで発勁する技は、太極拳の転身擺蓮の腰腿からの風擺勢を使った風擺拳です。風擺勢を使えばこのような強力な発勁になります。
また、後ろから掴まれたときに、後方に肘撃を行っているのは、転身右蹬脚の蓮心勢を使った、招式名「犀首観月」です。
また女性の蹬脚も套路にある左蹬脚や転身蹬脚のとおりで、追い打ちで膝蹴りを行っているのも、金鶏独立または海底針の沸勢での膝撃です。足刀は転身右蹬脚の過渡式の腰腿にて飛び出す発勁です。これらは力不要で勢いによって、発勁点に全重心が行き、強烈な発勁となります。全て「儘勁」という、自ずから意識せずとも気持ちがその方向に動き出せば自然と飛び出す発勁です。真の実戦はこれが全てです。考えていたら遅い上に、力を用いようとするので、このようにはなりません。「用意不用力」… 続きを読む

85式太極拳・白蛇吐信は放鬆の極限で発勁


今日の夜間クラスは白蛇吐信。終盤に出てくる通常は撇身捶のところで白蛇吐信の尖掌を打つ。撇身捶は「裏勢」にて巡るべき巡る短打を繰り出す型で、最後に裏勢を飛び出して戻ってきた撩拳にて過渡式となる。
白蛇吐信は、放鬆によって経絡が閉じる(合経)により、その最も中心にある人間の矢状面を走る中心線「中(ちゅん)」に収斂した右手がまるで蛇の下のように繰り出される。
収斂したときには、蛇が舌をぐっと喉の奥にため込み、そこから口を開けて喉の奥から舌が飛び出し様な発勁となる。… 続きを読む

太極拳の楊式は、実際に使えない。これはとんでもない間違いです。

太極拳の楊式は、実際に使えない。これはとんでもない間違いです。

今一般に普及している太極拳は、攻防を目的にしたものではない、ただそれだけのことです。

楊式は楊無敵と言われたほどの理想的な攻防術です。しかし、それを極めるには、武道としての太極拳、すなわち、道が必要なのです。太極拳は道教の道の教えから名付けられています。しかしそんな難しいことはさておいて、簡単に自然で、無為すなわち故意ではない自然体であるときに使える武術なのです。… 続きを読む

太極剣・風捲荷葉の発勁・今日も樫の半棍が2本折れる

今日の武器クラスは太極剣54式・対錬で剣で打ち合うと剣が壊れてしまう可能性があるので、いつもの通り、剣の代わりに半棍にて招式を行う。相手の袈裟切りに対して、風捲荷葉で防御して蓄勁から相手の半棍に対して発勁(人間に打ち込むと大けがするので)・樫の木の半棍が1本折れ、もう一本の半棍も折れるという事態に。今後は鉄製(ステンレス)の半棍での稽古を検討する。

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太極拳はハードロックを聴きながらでも出来る

「直心是道場(じきしん これどうじょう)」とは

「素直な心があれば、どこでも修行の場になる」という意味の言葉です。

あるとき、一人の修行者が「都会の騒がしい環境では修行ができない」と思い、静かな場所を求めて街を出ようとしていました。すると、門で維摩居士(ゆいまこじ)という高僧と出会います。

修行者が「どこから来たのですか」と尋ねると、維摩居士は「道場から来たよ」と答えました。
「それはどこにあるのですか?」とさらに尋ねると、彼はこう言いました。… 続きを読む