太極拳を美しく始める──「導引」から「套路」へ、伝統の学び方

太極拳は、動きそのものはゆっくりしているにもかかわらず、いざ覚えようとすると意外に時間がかかるものです。特に套路(とうろ)と呼ばれる「型の連続動作」は、一見すると複雑で、動きも多く、初心者の方にはなかなかハードルが高く感じられるかもしれません。

ですが、実は中国に古くから伝わる、とても効果的で自然な「学び方」があるのをご存じでしょうか?

まずは気持ちのよい「導引」から始めましょう

 

太極拳の套路をいきなり丸ごと覚えるのではなく、まずはゆったりとした「導引(どういん)」や簡単な気功動作から入るのが伝統的な方法です。… 続きを読む

楊式太極拳の点穴術。行気の極意と、三尖と節の技術で始めて実戦で使えるようになる。

私たち人間はエネルギーを生成し、そのエネルギーの働き=気で生命活動を行っています。その気は通り道(経絡)から体中を巡り、その局所(経穴)で集結し、生命活動を活性化します。
楊式太極拳の源流である武当山の太極功は套路に於いて、この経絡と経穴の活性化を図る行気を含んでいます。まずは坐道において気を巡らせる環流法という特別な座り方にて、行気の基本を毎日涵養します。
そして無為自然に立つとその気は、身体を天と地につなぐように気が巡ります。この気の巡りが、小周天・大周天を連結すると、大架式という套路が始まります。… 続きを読む

站椿を極める。秘密は坐道にあり。楊式太極拳の極意

太極拳の源流は坐道にあります。
坐道でも特に、玄牝抱球を極めれば、太極拳の基本は完成したと言われます。
正座して座り、その膝の上に玉を抱くこの坐道は、このまま立つと站椿になります。
包球站椿は、最も基本的な站椿であり、太極拳の套路の予備式にて玉を抱きます。
武道クラスでは、両手を前から両手でつかまれた場合は、太極拳には多様な技がありますが、この站椿だけで相手を制していく技を稽古しました。
この稽古風景と站椿について、YouTubeに動画をアップロードしましたので、是非ご覧下さい。… 続きを読む

武当山に似ている摩耶山で、太極拳の稽古を毎日受けていた日を思い出します


おはようございます。
私が25才の頃、王師との待ち合わせは、朝の9時に、神戸の摩耶山のロープウェイの駅で待ち合わせで、それからロープウェイで頂上まで行くこともあったり、その付近の王師が知る秘密の場所で、朝から太極拳を学びました。
半年ぐらいはほぼ毎日で、もう、あたりまえのような日課で、周辺のホテルに泊まったり、有馬温泉に泊まったりすることもたまにありましたが、家からは車で40分ほどでしたから苦にはなりませんでした。… 続きを読む

魔法のような太極拳の極意は連にあり、連は、毎日の套路にて涵養する

毎日の稽古は、武当山で行われていた稽古と同じ模様で、今の武当山ではなく、崩壊前の武当山には武当道派があり、その結社として黄金蓮結社が中国全土の市中で活動していました。
市中の黄金蓮結社の道士は、様々なゲリラ活動に加わっており、彼らの使う武術は「拳法」と呼ばれ別格視されていました。武当山では、実戦太極拳を「太極拳法」と呼んでいたからです。
この道士たちに実戦的な太極拳を教えていたのが、私の師「王師」でした。… 続きを読む

毎日実戦で使っていた太極拳・私の病気を治した太極拳・医武同源

18才ごろから働いていた、大阪ミナミ(現中央区)の宗右衛門町ダイヤモンドビル6階のサパークラブ「クレージーホース」。
500席以上あり、フィリピン人の生バンドが演奏し、ホールでダンスを踊るスタイルの店で、客は裏の人と芸能人が4分の3で、私は、20才の頃にはその店の幹部になり、毎日数回起こるプロどおしのケンカを止める立場にいました。
ここが本店でしたが、梅田には梅田店(席数800ほど)があり、そこはキル・ビルという映画のモデルとなりました。その他にも北新地や京都にもカルチェラタンという店舗があり、ディスクブームで賑わっており、どの店も土曜日は2時間でcheckout、いわゆる出て行ってもらう形式を取っていました。… 続きを読む

武当山伝統の太極拳の武道稽古・初めて一部を公開します。

中国の武当山。古代からの太極拳(太極功)の稽古の風景は、私が王師から稽古を受けていたのと同じだそうで、今もその伝統のまま稽古しています。
毎日の套路は、勢の涵養で最も重要です。

勢が無限に広がり収縮する大架式で行います。

そして、その勢を以て人間どおしが重なり合う条件によって、そこに勁が発生します。
これが発勁です。

相手の条件がこちらに向かってきたり、去って行ったりする動きに、自然とこちらの勢いが随います。これが随です。套路にて自分の身体が破綻に向かっていくときに起こる勢です。いわゆるバランスが崩れていくときの勢いです。… 続きを読む

85式套路・斜単鞭・斜の理由は、仙人歩へ繋がる発勁


 木曜日の夜間クラス。予定は67進歩搬攔捶から68上歩攬雀尾の予定でしたが、どこからか、48斜単鞭の話題になり、48斜単鞭から49野馬分鬃となりました。
 なぜ「斜」なのかという事です。
 単鞭の勢は単捶勢であり、鞭のような勢から単捶勢を持つことから鞭勢とも呼ばれます。
 ぬれタオルでバチンとやる、あれです。過去に「やってみてくれ」という私の古い弟子の要望に応え、実際にやってみると、筋肉隆々の弟子のの身体に、10cm大の円形の水腫れが出来、その上、痛さのあまりうずくまったほどです。顔面などに打つと危険です。… 続きを読む

武当山の徐本善が作った太極拳の套路に合わせた物語

 私の太極拳の師は、かつて大阪最大の任侠組織で「代貸」を務めていた私の祖父の用心棒をしていた中国人です。

祖父の組織は博徒と色街の他、大阪において全日本プロレスを発足し、大阪歌舞伎座の運営、とび職や清掃業なども行っていました。また、初代警視総監・鈴木氏とともに、大阪の治安維持にも深く関わっていたと自負していた組織です。

その中国人の師・王(おう)師(1905年〜没年不詳)は、当時の中国・武当山で道総を務めていた徐本善(1860〜1931年)の側近でした。様々な事情により、王師は上海から児玉誉士夫氏らのつてを通じて来日し、神戸の組織(現在の最大手暴力団で、長は全日本プロレス発足時の副会長)を経て、私の祖父のもとに身を寄せました。… 続きを読む

書籍出版10周年を迎えて──次なる一歩、「楊式85式太極拳」の真髄へ

2014年に出版した拙著『簡化24式太極拳で骨の髄まで練り上げる技法』は、おかげさまで多くの読者の皆様に支えられ、出版10年を超えることが出来ました。本書では、24式太極拳を通じての「行気(ぎょうき)」の技法をも紹介し、すなわち“気”を効率的に全身へ巡らせ、骨の髄にまで浸透させる武当山伝統の体得法を初めて公開し、多くの太極拳愛好家の方々に新たな修練の視点を提供できたと自負しております。

現在私は新たな書籍の準備に取り組んでいます。「武当山伝統の楊式85式太極拳」この奥深く優雅な套路の中に息づく、本格的な「行気」の技法を、今改めて現代の言葉で、かつ体系的にご紹介しようとしています。… 続きを読む