牛を引き、豚を投げるような腕力ばかりを誇って、 それが一体何になるというのか。–袁希濤

袁希濤は北京にて活動していた、武当山の武当道派の道家で、太極拳の師範でもある人物です。
この袁希濤が、1921年に許禹生が発行した「太極拳勢図解」という書籍の冒頭に題詞として下記の文を載せました。その原文は下記のとおりです。

在昔角牴。意存釣奇。曳牛摶豬。徒勇何為。
嗟彼武術。損益然疑。發揮光大。其在是時。
敎誨有度。調一罄宜。桓桓學子。天馬得覊。
克剛克柔。以遨以嬉。筋骨互運。心力互追。
著者楮墨。法無所遺。流傳萬本。並詔來茲。
表斯微尚。請鑒於詩。天之方 。無為夸毗。
袁希濤

【日本語訳】
かつては角力や対決に明け暮れ、奇をてらった技を追い求めたが、牛を引き、豚を投げるような腕力ばかりを誇って、それが一体何になるというのか。

ああ、武術とは――
その利と害は、常に疑問がつきまとうもの。だが今こそ、武術を発展させ広める時である。

教え導くにも節度があり、心身を調和させることで、全ては整う。
立派な若者は、まるで天馬が手綱を得たように、剛にも柔にも秀で、遊びのように武に親しむ。

筋と骨は連動し、心と力は呼応する。著者はこれを紙に記し、理法を余すところなく伝えた。

その教えは万冊に及ぶ書物に流れ、そのすべてが今ここに伝わっている。

このような微かな高尚の志を表すため、詩として記しておく――
天の理に従い、無用な誇張をせずとも、その価値はすでに明らかである。
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まさしく、太極拳の師範らしい題詞です。

またこの表紙を飾る題字(書の揮毫)を担当した傅增湘(1872〜1949年)は、書家・官僚・学者として著名な人物であり、武当山の徐本善と懇意にしていたため、私の師の王師もよく知っていました。
このあたりの話は、王師から良く聞かされていたので、またどこかで詳しくご紹介したいと思います。

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