無用の用・不易流行と太極拳

太極拳は道教の理念を武道の中に多く取り入れています。

道教の祖師は老子ですが、彼の「無用の用」という概念は有名です。

例えば、太極拳の套路で、広い公園で大きな大地に立っていますが、大地の内で使っているのは足で踏んでいる部分だけです。だからといって、足が踏んでいる部分だけを残して他が無くなってしまったらどうでしょうか?奈落の底に脱落ですね。このように踏んでいるところは用、踏んでいないところは無用、次に踏んだところが用であり、踏み終えたところが無用に変化するのです。これが太極拳の歩法です。… 続きを読む

太極拳練習に準備運動はいらない。

どのような運動でも武道でも、準備運動というものを行います。

太極拳も練習の前には準備運動をおこないますが、実際に武道として太極拳を使うということを考えると、本来準備運動はいらないのです。

まず、太極拳の練習の前には、経絡を刺激する運動として、指龍という、五指を動かして体の気の通り道、経絡とその通過点の経穴の緊張をやわらげる準備運動を行います。

しかし、指を動かすだけなので、これが準備運動かというほどのものです。指龍は、厳密に言うと朝起てから、畑仕事やちょっとした家事、朝ご飯の用意をするときに、柔らかなリラックスした動きをして経絡がなめらかに刺激されていればいれば、もう練習を行う前には必要のない準備運動です。朝起きたときから自然と準備はできているということになります。… 続きを読む

無意識で動く太極拳の真の武術性

太極拳生活を続けていると、布団の中に入るとすぐに深い眠りにつき、そして、深い眠りの中でも異変ですぐに目が覚めます。

深い睡眠でも違和感に対し即座に目が覚めるのは、太極拳の副交感神経を使った練習で、深層意識を使った聴勁(相手や環境の気を感じ取ること)が自然に身につくからです。

動物としての本能を思い出すみたいなもので、深いリラックスの中で、気が動く訓練を行います。

このような練習を続けていると、深い眠りの中で、少しの違和感にさっと目が覚める深層的な自信が身につきます。… 続きを読む

百術不如一誠・太極拳は百術不如一勢

「百術(ひゃくじゅつ)は 一誠(いっせい)に 如(し)かず」 と読みます。政財界の多くの重鎮が座右の銘にしている言葉です。百の術も一つの誠におよばないと言うことです。一如という言葉は同じと言うことですが、不如はおよばない同じではないと言うことで、前の言葉が後ろの言葉と比べるときに使います。出典は明らかではありませんが「百聞は一見に如かず」のように中国の趙充国伝で「充国曰、百聞不如一見、兵難隃度、臣願馳至金城、図上方略」とあるように、その周辺の出典であるところが有力です。… 続きを読む

太極拳から見た肉体の動き

人間の社会生活において、肉体のうちあまり使われていない部分は、スポーツなどの素晴らしい技の中で脚光を浴びています。
スケートのキム・ヨナさんの美しいジャンプなどに使用されるインナーマッスルもそうです。
このように、太極拳は普段使用されていない肉体の動きを、本来持っている能力として思い出して緩やかに育てていこうとする武道なのです。
インナーマッスルなども、リラックスして見つめていくと、しっかりと動き、高度な運動そしてバランスを司る機能として素晴らしいものであることが身をもって経験できます。… 続きを読む

相対するものを知る太極拳

強弱とは単に相対するものです。

強弱とは単に相対するものです。
左と右、上と下、女と男などと同じように性質として考えるのが太極拳です。
強いから良い、弱いから悪いのではありません。

強いところはどこか、弱いところはどこかそれを知ります。
何に強いのか、何に弱いのかそれを知ります。

よく観察すると、強いところには弱いものが混在しています。
そして弱いところには強いものが混在しています。

それが太極と呼ばれる混沌とした状態です。… 続きを読む

素に戻っていく太極拳

太極拳の面白いところは、道を歩むように一歩一歩踏みしめて根本的なところに戻っていくところにあります。素に戻っていくという表現が適当かもしれません。

套路などの基本練習は、例えば、生きていくことに置き換えると、人間として動くための自然な動きの練習です。

人間は動くのに、いちいち練習しなくても動けるようになります。

これは当たり前です。

太極拳も実は、自分の身を当たり前に守るための、人間の根本を思い出すためのものなのです。… 続きを読む

太極拳は努力しない。

山で遊び出す子ども達はとても元気です。山の中を走り回っている内に、色々なことを忘れて、ただ無邪気に遊び回っています。

そんな子ども達の、足下や手の動き、身体の動きを細かく観察していると、驚くような巧みな高度な動きで、山を駆け上り、飛び降り、ぶつかり合っています。

これは何でしょうか?努力のたまものでしょうか?

実は、これが太極拳が求めているところなのです。

確かに努力も大切でしょうが、努力したことを積み重ね、その成熟したものに頼り切ることが果たして全てでしょうか?… 続きを読む

囚人から人に戻る太極拳

囚われを見つけ出すのが太極拳の套路です。

囚われという字は人を囲みの中に閉じ込めている字です。

囚人の囚です。

物理的に檻に閉じ込められていいるのではなく、色々な条件に囲まれている状態です。

例えば、功名富貴(こうめいふき)という四本の線を取りはからえることが出来れば、並外れた人間になることが出来、そしてもっとレベルの高い話では、道徳と仁義という四本の線を重視する心を解き放すことが出来れば、聖人の仲間入りが出来ると、あの論語と並んで広く読まれている菜根譚(さいこんたん)の… 続きを読む

太極拳は、不老長寿に役立つ医武同源

太極拳は、不老長寿に役立つと一般的に考えられています。

健康にいいというだけの理由ではなく、太極拳の運動のしくみが,人間の根幹部分の生理を使うところから、現実的に若返り,病気から遠ざかり元気になり、又事故や怪我を未然に防げる危険を察知して防衛する本能的な能力をより思い出して練るところにあります。

例えば、心と健康の関係にしても、副交感神経を優位にして,穏やかなストレスに強い心身を育て、放松というとらわれのない根幹的な人間の心の太極拳の意で、そのまま精神や身体が動くように、繰り返し毎日運動します。… 続きを読む