中国で清朝が西洋列国の統制の下に終わり、厳しい管理統制機能を持つ共和政治が生まれ、太極拳などの武術は中国国民党の指導の下で、1928年に南京中央国術館にて統制されました。また、北京では中国共産党の先駆団体の管理の下、下北京市長が設立した北平体育研究社にて統制されました。
その後、共産党の国家体育運動委員会によって制定太極拳と、伝統太極拳が国策の元で中国の国家文化として統制され、1986年3月に「国家体育武術研究院」が設立し、より市民的なスポーツ競技として武術を定着させるために、1990年には中国が初めて主催した「アジア競技大会」で武術 ( Wu-shu )を公式競技種目として加えて、国民に対する民族武術への振興を大きく示しました。その状況の中で 楊式太極拳を含む伝統太極拳は套路など万人に親しみやすく、又制定された太極拳の套路は民間の健康体操として世界中に流布されており、太極拳は新生中国を象徴する、神秘的な近代中国武術体操として、気功を含め世界中にアピールするための道具として大いに用いられるようになったのです。
このように、武術が共和制という政治体質によって必要な対策が採られていったのも、これも政治を行うものにとっては当然のことだと思います。台湾や中国にはこのような統制のもとに武術が行われ、それが日本や世界に広まっていきました。
今回のヒップホップの統制もそうですが、管理統制できないものを認めることができないのは、中国ではあたりまえのことです。その中で育つ太極拳や武術はその枠を超えることができないものです。
しかし、本来の太極拳もヒップホップも、そのような枠があるものではないはずと、私は思います。
それどころか、全く逆の方向を目指すものであり、管理統制と自由程の差を持つものであると思います。同じ太極拳という名を持っていても、全く違うものであると、私は思います。
ヒップホップも、もしも今の中国で統制されて認められればどのようなヒップホップになるのか想像してみれば、今の一般に普及している太極拳や中国武術がどのようなものかも分かるのではないでしょうか。
ヒップホップは、1970年代にアメリカのニューヨーク、サウス・ブロンクス地区で、アフリカ系アメリカ人などのコミュニティから生まれたとされるサブカルチャーである。(写真は、中国の公園では太極拳。提供:日本経営管理教育協会)