太極拳では、易骨といって、骨を鍛えていく修練を行います。
骨は命を終えても最後まで残る人体です。
太極拳は骨と筋を使って動くということがわかるようになると、年をとっても骨と筋だけで、十分な勢を保つことができます。
我が専修クラスでは「叩歯鳴鼓」などの坐道で骨に気と勁が伝わる感覚を身につけ、武道クラスでは徹底的に骨を鍛えます。
太極拳の考え方では、バランス筋などを育てても、年齢を増すごとに衰えていきますから、その鎧が取れれば、やせ衰えた骨が残るので、最初から骨と最低限の筋を維持することを修練します。易筋、易骨です。
筋肉を鍛えるのも大事ですが、なぜ筋肉を鍛えるかは、その肉の内にある骨と筋を強化し、肉を離していく(依存しない)という思想に基づきます。
この記事でも筋力アップを骨折予防に良いとし、太極拳を取り上げていますが、太極拳でバランス筋などの筋力アップをはかり、骨を守るという考え方は本末転倒です。筋力が衰えた頃に、守られ続けた骨は耐えることができませんし、骨自体が刺激から守られるため、その役目を放棄します。従ってもろくなるのです。
太極拳の易骨は、どんどんと骨に振動と勢を与え続けます。いつも、骨は刺激にさらされています。その骨に刺激を伝えるのは、武道クラスにおける、外圧、外気です。相手の擒拿や摔角、拳脚の寸当てなどなどです。
気は骨髄に宿り、相手の骨髄にまで達します。ごん・ごんと我が武道クラスでは骨身にしみる感覚を体験します。
そして自らは、その骨を自由に無理なく動かすためのバネのような筋を育てていきます。易筋です。
骨と筋ばかりの人間になっても使えるのが太極拳です。そしてそのようになっても、健康を維持できるのが人間の先天です。赤ん坊には力のある肉はありません。しかし弾みの筋と、髄を生かす骨はあります。年をとっても、骨と筋を健康に保つことが大切です。
人間の骨は、適度に刺激を与え続けていると、その都度必要な成分を保持し、自らを強化していき、大事に備えます。その基本原理を忘れて、単純に筋力を強化していても、逆作用になります。
太極拳はバランス筋を鍛えますが、危険範囲を超えない、セーフゾーンの太極拳は、その反作用にも目を向けるべきでしょう。太極拳は武道です。なぜ武道なのか?
太極拳を教えておられる皆様には、ぜひもう一度、太極拳の易筋行、易骨行についてぜひ関心を持って頂ければと思います。
一人一人ができる骨折予防の具体的対策は何か。日本整形外科学会では、運動器の障害による要介護の状態や要介護リスクの高い状態を表す言葉として「ロコモティブシンドローム」を提唱し、ロコモチャレンジ!推進協議会を立ち上げているが、同会のWEBサイト(http://www.locomo-joa.jp/)では「ロコチェック」として運動器の現状をセルフチェックできるテストが紹介されている。講演では、このロコチェックの活用とあわせて、定期的に骨密度検査を行い、運動器の状態を自覚することが推奨された。また、バランス・筋力アップが期待できる運動「ロコトレ」や太極拳、転倒防止のための危険箇所の点検・改善も促された。